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2024年2月3日 12:30~12:44

 熊山遺跡を北西に見据えて、梅の木の下で書いている。真っ白な紙が太陽の光を反射して眩しくなるかと不安もあったが、ちょうど雲がかかったため助かった。

 熊山は保管林らしく豊かな植生を観察することができる。周囲ではスギ、チャノキ、ヒイラギ、シロダモなどが森林を形作っている。そんな森林と立ち入り禁止の杭、鎖に囲まれてなお、熊山遺跡は人目を惹き続けているから大したものだ。奈良時代の仏塔と考えられている遺跡の形は独特で、大きさも形も同じものはない石が連なって背を伸ばし、3段の石積み構造をつくっている。2段目の正面には長方形の穴が入口のように空いている。遺跡内部には石室があるらしいが、石に閉ざされており中を伺うことはできない。積みあがっている石は流紋岩といい、粘り気の強いマグマが固まった火山岩である。この周辺で火山活動があったことを示すものであるらしく、事実、8000万年前には火砕流を発生させたこともあるという。そんな火山岩が積みあがった遺跡と豊かな植生が一つの視界に収まっている。そのことが、そんな時間があった。

 日差しが強くなった。雲が動いて太陽が出てきた。葉の茂った木々の下へと姿を隠そうとあたりを見渡して、動物の気配がないことに気が付いた。少なくとも高い声で鳴く鳥がどこかにいるはずなのだが分からない。茂みを揺らすことをためらって、じっと日差しを受け取った。